ギターとハーモニクス

セントとヘルツの違い

  • セント

    半音の 1/100 が 1 セントです。つまり半音は 100 セント、1 オクターブは 1,200 セントになります。

    どんなに低い音程でもどんなに高い音程でも半音の 1/100 が 1 セント。

    100 セントで半音、1,200 セントで 1 オクターブはどの音域でも成り立ちます。

  • ヘルツ

    1 秒間の周波数(波の数)をヘルツで表します。1 秒間に 440 回波があると 440 ヘルツです。

    波は行ったり来たりしますが、行って来て、それで 1 回とカウントします。つまり往復の回数です。

    周波数が倍になると 1 オクターブ高い音程になり、周波数が半分になると 1 オクターブ低い音程になります。

  • セントとヘルツの違い

    A = 440Hz を基準に考えます。1 オクターブ低い A は 220Hz、1 オクターブ高い A は 880Hz になります。

    低いほうの 1 オクターブは 220Hz ~ 440Hz で、差は 220Hz。1 オクターブなので差は 1,200 セント。

    高いほうの 1 オクターブは 440Hz ~ 880Hz で、差は 440Hz。1 オクターブなので差は 1,200 セント。

    同じ 1,200 セントでも周波数の差は違います。このように、セントとヘルツの関係は音域によって変わります。

純正律と平均律 ~ 有理数と無理数の世界

  • 平均律

    1 オクターブを均等に 12 で割って作った音程を平均律と言います。

    等比数列なので半音上がるごとに 2 の 12 乗根を基の周波数に掛けていけばいいわけです。

    2 の 3 乗を 2^3 と表記すると、2 の 12 乗根は 2^(1/12)。

    ドレミファソラシドはミファとシドの間が半音 2^(1/12)、それ以外は全音 2^(2/12) = 2^(1/6) の音程差です。

    つまりドレミファソラシドの音程比はドを基準として以下のようになります。

    1 : 2^(2/12) : 2^(4/12) : 2^(5/12) : 2^(7/12) : 2^(9/12) :2^(11/12) : 2^(12/12)

    = 1 : 2^(1/6) : 2^(1/3) : 2^(5/12) : 2^(7/12) : 2^(3/4) :2^(11/12) : 2

  • 純正律

    2 つの音は、その周波数比が簡単な程きれいに混じります。

    1 : 1 は同じ音程。1 : 2 は 1 オクターブ。2 : 3 は完全 5 度。4 : 5 は長 3 度。5 : 6 は短 3 度。

    (3 : 4 は完全 4 度ですが、2 : 3 の低い音程を 1 オクターブ上にすると 4 : 3 になる事から分かります)

    例えばドミソは 4 : 5 : 6 できれいに混じります。同じようにファラド、ソシレも 4 : 5 : 6 です。

    これらの共通音を使って各音程を計算すると、ドレミファソラシドの音程比は以下のようになります。

    24 : 27 : 30 : 32 : 36 : 40 : 45 : 48

    最初の音を 1 とすると 1 : 9/8 : 5/4 : 4/3 : 3/2 : 5/3 : 15/8 : 2

    このように作った音程を純正律といいますが、ラドミやミソシは 10 : 12 : 15 になり、レファラは 27 : 32 : 40 という濁った和音になります。全音や半音の音程比も場所によって違うため、転調するとうまく行きません。

  • 平均律と純正律 ~ 有理数と無理数の世界

    純正律は全ての音程比が有理数ですが、平均律はオクターブを除き全ての音程比が無理数になります。

    つまり、平均律と純正律とでは、オクターブ以外は全ての音程が異なるわけです。

ギターという不思議な楽器 ~ ギターから出る音は純正律? 平均律?

  • ギターのフレットは平均律

    ギターはどの調でも演奏できるように、フレットは平均律の音程で調整してあります。

    フレットを使った(通常の)演奏は平均律の音程になるわけです。

    純正律とは違い、そのままではきれいな和音は出ませんが、ピアノ等の楽器と同じ条件です。

    曲やキーによってチューニングを若干補正する人は、そのきれいな和音の響きにこだわりがあるわけです。

  • ギターのハーモニクスは純正律

    ところがギターのハーモニクスは弦を整数比で分割して振動させているため、純正律になります。

    ギターという楽器は視覚的に分かりやすいのですが、振動する弦の長さと周波数は反比例します。

    振動する弦の長さが半分になれば周波数は倍になり、1 オクターブ上の音程が出るわけです。

  • ギターから出る音の不思議

    つまりギターを普通に弾くと平均律になり、ハーモニクスを出すと純正律になるわけです。

    そのため、オクターブのハーモニクスを出さない限り、そのハーモニクスはギターのどのフレットの音とも合いません。

ハーモニクスは正確な音程からどの程度ずれるか。

  • 12 フレット上のハーモニクス

    12 フレット上のハーモニクスは弦を 2 分割するので正確に開放弦の 1 オクターブ上の音程が出ます。

    12 フレット上のフレットを押さえた音程も弦を 2 分割するので正確に開放弦の 1 オクターブ上の音程が出ます。

    つまり、これらの音程は理論上完全に一致します。エレキギターのオクターブ調整は非常に重要です。

  • 5 フレット上のハーモニクス

    5 フレット上のハーモニクスは弦を 4 分割するので正確に 2 オクターブ上の音程が出ます。

    Chart を見ると分かりますが、このハーモニクスは正確に 5 フレットの上ではありません。

    4.9805 フレット、つまり 5 フレットより若干ナットよりです(約 1/50 フレットの演奏上は気にならない誤差)。

    4.9805 フレット上のハーモニクスは弦を正確に 1 : 3 に分割しますが、それは純正律での話です。

    平均律で打ってあるフレットの位置(完全 4 度上の 5 フレット)とは一致しません。

    (弦の長さが 3/4 になると純正律の完全 4 度上の音程。平均律の完全 4 度上との違いです)

  • 7 フレット上のハーモニクス

    7 フレット上のハーモニクスは弦を 3 分割するので純正律で 1 オクターブと完全 5 度上の音程が出ます。

    正確には 7.0196 フレット、つまり 7 フレットより若干ブリッジよりです(約 1/50 フレットの演奏上は気にならない誤差)。

    7.0196 フレット上のハーモニクスは弦を正確に 1 : 2 に分割しますが、それは純正律での話です。

    平均律で打ってあるフレットの位置(完全 5 度上の 7 フレット)とは一致しません。

    (弦の長さが 2/3 になると純正律の完全 5 度上の音程。平均律の完全 5 度上との違いです)

    では、平均律とはどの程度音程がずれるでしょうか。

    Chart を見ると分かりますが、音域に関係なく +1.9550 セント、つまり半音の約 1/50 高い事が分かります。

    周波数で見ると、6 弦の場合は 0.2790Hz、1 弦の場合は 1.1161Hz 高い事が分かります。

    平均律の音程を一緒にならすと、6 弦の場合は 1 秒に 0.2790 回、1 弦の場合は 1.1161 回うなるわけです。

    セントの違いは音域に関係ありませんが、うなりに関係する周波数の差は音域によって異なります。

  • 4 フレット上のハーモニクス

    4 フレット上のハーモニクスは弦を 5 分割するので純正律で 1 オクターブと長 3 度上の音程が出ます。

    正確には 3.8631 フレット、つまり 4 フレットよりナットよりです(約 1/7 フレットの演奏上意識すべき差)。

    3.8631 フレット上のハーモニクスは弦を正確に 1 : 4 に分割しますが、それは純正律での話です。

    平均律で打ってあるフレットの位置(長 3 度上の 4 フレット)とは一致しません。

    (弦の長さが 4/5 になると純正律の長 3 度上の音程。平均律の長 3 度上との違いです)

    では、平均律とはどの程度音程がずれるでしょうか。

    Chart を見ると分かりますが、音域に関係なく -13.6863 セント、つまり半音の約 1/7 低い事が分かります。

    周波数で見ると、6 弦の場合は 3.2703Hz、1 弦の場合は 13.0810Hz 低い事が分かります。

    平均律の音程を一緒にならすと、6 弦の場合は 1 秒に 3.2703 回、1 弦の場合は 13.0810 回うなるわけです。

    誤差として見過ごすわけにはいかない音程差とうなりです。

  • その他のハーモニクス

    上記の例を参考に、各自 Chart を使って調べてください。フレット上のポジションを確認するだけでも役に立ちます。

    ハーモニクスがうまく出ない場合、この Chart でポジションをまず確認してみてください。

    今までは指定フレットの真上で鳴らそうと思ってませんでしたか? それだとうまく鳴らない場合があるわけです。

なぜギターのチューニングは合わないか。

  • ハーモニクスを使ったチューニングの問題点

    5 弦を A = 440Hz に合わせる場合、5 弦の 5 フレットのハーモニクスを良く使います。5 弦の開放弦 A は A = 110Hz なので、5 フレットのハーモニクスを使うとその 2 オクターブ上、つまり A = 440Hz が出るわけで、音叉などが出す A = 440Hz と全く同一の音程が出るように調整すればいいわけです。

    さて、 4 弦を合わせる時、5 弦の 5 フレットのハーモニクスと 4 弦の 7 フレットのハーモニクスが同じ音程になるようにチューニングしていませんか? 5 弦 5 フレットのハーモニクスは正確に A = 440Hz が出ますが、4 弦 7 フレットのハーモニクスは Chart を見ると 0.4972 ヘルツ平均律より高い事が分かります。逆に言うと 5 弦 5 フレットのハーモニクスと 4 弦 7 フレットのハーモニクスを合わせると、4 弦は低くチューニングされてしまいます。同じ方法で 3 弦をチューニングすると、3 弦は更に低くチューニングされてしまいます。

    1 弦や 2 弦の合わせ方はいろいろありますが、この方法では理論上正確なチューニングはできません。良く 3 弦が合わないとか 2 弦が合わないという話を聞きますが、ハーモニクスを使ったチューニングでは誤差が 2 弦と 3 弦の間に集中するので、この 2 弦間の誤差が気になるわけです。

    理論上合うわけがないので、耳が良く、正確にチューニングしようとする几帳面な人ほど、この罠にはまります。

  • フレットを使ったチューニングの問題点

    ではフレットを使えば正確にチューニングできるかというと、それほど問題は簡単ではありません。

    完璧なギター・弦、完璧な耳、完璧なペグ調整技術があれば理論上できますが、人間やギターは完璧ではないからです。

    例えば 6 弦 5 フレットの音程と 5 弦開放弦を合わせようとします。

    先ほど説明したとおり 5 弦の開放弦は A = 110 Hz です。

    6 弦の 5 フレットを押さえて 5 弦の開放弦と 1 秒に 1 回未満のうなりに調整したとします。

    6 弦の 5 フレットの音程は 109 ~ 111Hz となり、6 弦の開放弦は 81.6577 ~ 83.1560Hz になります。

    一方、6 弦 5 フレットのハーモニクスと 5 弦 7 フレットのハーモニクスの音程を合わせようとするとどうなるでしょう。

    5 弦 7 フレットのハーモニクスは 110Hz の 3 倍なので 330Hz です。

    6 弦 5 フレットのハーモニクスを 1 秒に 1 回未満のうなりに調整すると 329 ~ 331Hz になります。

    この場合、6 弦の開放弦は 82.25 ~ 82.75Hz になります。

    6 弦の開放弦は平均律で 82.4069Hz なので、フレットを使った場合の誤差は -0.7492 ~ 0.7491、ハーモニクスを使った場合の誤差は -0.1569 ~ 0.3431 となり、誤差の中心がずれているとはいえ、ハーモニクスを使ったほうが正確なチューニングを期待できるわけです。

  • 完璧なチューニング方法は?

    ハーモニクスを使うと中心がずれ、フレットを使うと誤差が大きくなります。

    ハーモニクスを使うと比較的正確にチューニングできそうですが 2 ~ 3 弦に誤差が集中します。

    では、どうチューニングするのがベストか、後は各自考えてみてください。

    これまでの方法はチューニングの誤差を考えてなかったと思いますが、実際はフレット・弦・耳に誤差があるわけです。

    この誤差とどう折り合いをつけていくかは企業秘密の範囲でしょう。

    もちろんチューニングメーター派は悩む必要がありません。

    純粋にギターという楽器、そしてチューニングに興味がある人だけに関係する話なので。

最小公倍数を利用したハーモニクス

  • ハーモニクスの原理

    ハーモニクスポイント上に指を置いてハーモニクスを出す場合、弦が 2 分されて振動します。

    ハーモニクスポイントを境に、ナットよりの部分とブリッジよりの部分です。

    その長さの比が a : b なら弦の 1 / (a + b) の長さで弦が振動するわけです。

    例えば 7 フレットのハーモニクスを弾く場合、7 フレットの上に軽く指を乗せて弦を弾きます。

    この状態で弦が、ナットと 7 フレット、7 フレットとブリッジに 2 分されます。

    長さの比が 1 : 2 なので弦長の 1 / (1 + 2) = 1 / 3 で弦が振動します。

    19 フレットのハーモニクスは比が 2 : 1 なので、同様に弦長の 1 / (2 + 1) = 1 / 3 で弦が振動します。

    Chart を見ると上に 2 ~ 12 の数字が書いてますが、これが弦の分割数になっています。

    つまり、そのハーモニクスを出すための弦の分割ポイントがハーモニクスポイントになるわけです。

    注意して欲しいのは 2 : 4 で 1 / 6 のハーモニクスが出ない点です。

    先に 2 : 4 = 1 : 2 と最も簡単な整数比にする必要があり、結果として 1 / 3 のハーモニクスになります。

  • 最小公倍数を利用したハーモニクス

    上に書いたように、例えば 1 / 5 のハーモニクスは 1 : 4, 2 : 3, 3 : 2, 4 : 1 の 4 箇所で鳴らすことができます。

    では 1 / 6 はどうでしょう。普通に考えると 1 : 5 と 5 : 1 の 2 箇所しかありません。

    2 : 4 は 1 : 2 に、3 : 3 は 1 : 1 に、4 : 2 は 2 : 1 になるからです。

    ここで発想を変え、弦を 3 分割してみます。

    1 : 1 の 12 フレットと 1 : 2 の 7 フレットで(人差し指と小指を開いてください)。何が起こるでしょうか。

    1 : 1 = 3 : 3、1 : 2 = 2 : 4 なので、2 : 1 : 3 に 3 分割されました。

    この状態でハーモニクスを鳴らすと 1 / 6 のハーモニクスがでるわけです。

    2 分割と 3 分割の場合、2 と 3 の最小公倍数が 6 なので、1 / 6 のハーモニクスになります。

    2 分割と 4 分割では、2 と 4 の最小公倍数が 4 なので、1 / 4 のハーモニクスになるのを注意してください。

終わりに

まだ書き足りない部分や、うまく説明できてない部分もあるのですが、ここに拘ると他のページに手を付けられなくなるため、一旦ここで終了します。ハーモニクスやチューニングについて少しでも参考になれば嬉しいです。


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